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我らの時代のロシア語   Vladimir Sue [詩 Shakespeare Достоевски]

 柏の蕪が味も生産量も日本一だということは、何よりも土壌の良さという事実に直結しているのだろう。
 涼子は農婦が引き抜いている白蕪の土汚れを見てそう思った。そして良いはずの土に、もし忌み嫌われるイットリウム90が含まれているとすれば、二十九年前のあの土塊にはストロンチウム90があったということになる。鳥肌がたった。極東でプルトニウムに手を焼いている人間がいれば、北極付近ではおこぼれのストロンチウムで電池を作っている人間がいる。涼子は紙コップを握りつぶして窓辺から離れた。
 山崎涼子(やまざき・りょうこ)は、ドイツに本社を置くオクト・ワグネルに勤務して六年目を迎えていた。余計ではあるが三十歳になった名古屋女である。エネルギー部門が野菜畑を見渡せる所に設立されて以来、柏の勤めも三年目を迎えていて、秋らしい収穫の後の匂い立つような関東ローム層の沃土も見慣れてきていた。毎日見る風景を暗く塗りこめるには、何かしらの白い悪意の一滴があれば充分なのかもしれない。涼子は気取り気にそう思うと、もう一度モニターに浮かぶ略図面の円筒形に顔を近づけて凝視した。それは縦割りで開かれたドラム缶状の物の内部構造を見せている。疲れたせいか中心にある90Srという文字がちらついて見えていた。しばらくすると全体が白い毒蛾に見えてくるのだった。
 原子力電池のファイルを開くことになったのは、出社して条件反射よろしくPCの電源を入れてすぐだった。原子力エネルギーを専門とする涼子のもとへ、原子力云々のファイルが転送されてくることは日常である。しかし略図はともかく現物の写真を見るのは初めてであった。誤送かと思い送信者の潘世備(ハン・セイビ)GM(ジェネラル・マネージャー)の内線番号に電話した。
 潘GMはいつものように淡々と言った。
「そう、原子力電池だ。一九八二年にシベリアのオイミャンコに設置されたものだ。手が空いていれば、話しておきたいことがある」
「原子力電池を買ってほしいと言ってきているのでしょうか?」
「電池はきっかけにすぎない。君にとっては、ちょっと嫌な話をすることになるかも…」
 潘にしては珍しく語尾を濁らせて、些か奇妙で熾烈な内容ということなので、特別室でのコーヒー・ブレイクとなった。
 オクト・ワグネルの能源事業部の日本支社は、柏郊外の戸建住宅が途切れる農地に面してあった。大手の重機メーカーが縮小対象として貸し出した三階建てである。外壁をチャート斑のスレートで補修したので、環境を重視した郊外型の学校のように見えた。正面玄関の社名プレートには、エネルギー部門の全権である潘GMのこだわりがあって「OCTWAGNER 日本支社 能源事業部」とあった。潘GMにとって、エネルギーはあくまで中華の能源でなければならなかった。その潘GMが一昨年、アジアの拠点として上海の次に選定したのが、蕪の生産量が日本一というベッドタウン柏の郊外だった。
 潘は中国の山東省煙台の出身だった。大阪とボストンに学んで、日本語と英語はまったく流暢である。さらに潘世備という個人の能力もさることながら、夫人がシンガポールの財界を牛耳る客家の名門の子女だったので、エネルギーに限らないオクト・ワグネルの中国販路を左右する重役となっていた。
「あんなものを作る連中はロシア人と相場がきまっている。暖をとるために隣の家に火をつける奴らだ」
 潘はそう言ってから白髪の端正な横顔を緩ませた。そして乱暴なジョークを裏付けようとするかのように手帳を取り出して読みあげる。涼子は自分のブラックと上司のカフェ・オーレを持って美しい眉をひそめていた。
「写真を撮った奴らの計測では、電池から約一メーター離れたところで一九マイクロシーベルトの放射能があったらしいが、通常の何倍くらい?」
「六〇〇倍以上ありますね」
 潘は女性のような指で紙コップを受け取って続けた。
「ありがとう。九六年の北方圏フォーラムでの核処理技術者の報告では、約一立方メーターのドラム缶型の放射線源量は三五万キュリー、見当がつかん。あのドラム缶型の電池は北極海沿岸などにおける灯台や無線標識の電源として、七七年あたりからソ連崩壊まで、約一千ヶ所に設置されたらしい」
「主に北極海沿岸と思っていいのですか」
「いや、オホーツク海つまりサハリンまでもふくめていて…八七年八月にはサハリン沖で原子力電池を運搬中のヘリコプターが事故をおこして、機体もろとも海中に没している」
 涼子は頷きながら窓際へ寄って一口啜ってから微笑むように言った。
「ボスが原子力電池を作りたいとか、掻き集めてアフリカの沿岸諸国に売りたいとか、ジョークで言われるのならともかく」
「この手の物の回収や運搬はロシアのマフィアでも断っているようだ。それに知ってのとおり、原子力関連、そして放射性廃棄物等は、二〇〇八年のロシア連邦法で、外国投資の制限に関する筆頭に挙がっている」
「ということは、これが原子力とは無関係なラインの障害になっているのですか?」
 潘は手帳で頬を軽くたたきながら椅子をひき寄せた。
「そう、金物屋のクラウゼヴィッツから直々に連絡をもらってね、彼の事業部の極東開発チームからの依頼なのだよ」
「メタル?金属事業部の極東開発チーム…足踏みしていると聞いています。能源としても油田とガス田、そしてウラニウムをざっと調べてみたのですが、先程の連邦法による制限もあってか…」
「クラウゼヴィッツもざっと言っていたよ、ニッケル、モリブデン、タンタル、ニオブ、そしてリチウム、これらがあるとは聞いているが、場所と埋蔵量がどうも不確実だと」
 涼子は困ったように唇を綻ばせて首を傾げた。
「希土類、イットリウム類も手に入れたいから情報がほしい、とかですか?」
「それは言っていなかったな…あとは高純度クオーツとかプラチナ類とか…メタルの連中が、クラウゼヴィッツが打診してきたのは、具体的な人材の支援なんだよ」
 潘も応じるように困ったような額へ手帳を翳した。
「人はまったく剣であり、羽であり、そして能源そのものだ。我が社で専門に原子力エネルギーを扱っている者は四十人ほどいるが、日本支社の山崎涼子、君をご指名ということだ」
 涼子は実しやかに謝した笑みを浮かべてみせた。
「私が?確かに扱っているMOX(モックス)と電池のストロンチウム90が無関係とは言いませんが、霜降り牛のためにコーンを買い漁っているのと同じで、発電のための触れたこともないMOXを扱っているだけですよ」
 MOXとはプルトニウムとウランの混合酸化物燃料である。
「MOXのプロをお呼び立てしているようじゃないのだ。それにロシアでMOXを使うには相変わらず処理施設の技術が伴わない」
 涼子は髪をかきあげて油断させる微笑を見せた。そして慣れているように椅子をひいて潘の視界へ入った。
「完了後に長期休暇を取らなくちゃならないような仕事は嫌ですよ、やっと三十になったくらいの普通の女なんですから」
「危険な仕事にはならないだろう…とは言っても、シベリアには行ってもらうことになるがね」
 涼子は寒いしぐさで純白の七部袖の両腕を抱えた。実際に川崎にある金属事業部の鉛色のプレートを想うと冷ややかさが身近になった。
「断ってくれても構わない。日本人のように言えば、私はクラウゼヴィッツに義理立てする関係でもないし、優秀な部下を別セクションの支援にまわすほど余裕があるわけじゃない。それに危険は伴わなくとも、君にとっては原子力電池を買い漁ること以上に不愉快なことかもしれない」
「いつも日本人のようにお気遣い頂きありがとうございます」
 潘は涼子の慇懃な言葉を噛みしめるようにカフェ・オーレを飲み干した。
「君が、お父さんからお祖父さんのことを、どれくらい聞いているかによるのかもしれないが…」
「祖父のこと?満州で行方不明になった祖父のことですか?」
 涼子は意外さを隠しもせず苛立つように脚を組んだ。そして分厚くて堅固なレザー表紙の手帳を引き寄せた。
「そう、黒須欣一郎、その人だ。君の祖父は戦前から大陸でクロス、黒い恵比須の須で黒須の名で、我々中国人顔負けの商売をしていた方だったらしいね」
 涼子は紙コップに薄らとついた口紅のコパーピンクから目を逸らした。
「父の旧姓が黒須だということと、祖父が満州や沿海州、そしてシベリアで毛皮などを扱っていた人だということは聞いています」
「竜骨大王…私は二十年ほど前にガスと石炭の事情を見るためにモスクワからシベリア鉄道に乗った。そして大学の地理学部の技官から竜骨大王の話を聞いた。竜骨って言ってもマンモスの骨だがね」
 潘は竜骨と称する漢方薬の材料にもなるマンモス象の化石に話が及ぶのを堪えた。
「それはともかく、君の祖父だが黒須と呼ばせてもらうと、黒須が行方不明、と言うよりも商いの表舞台から姿を消してからのことは、クレムリンへ報告されて引き継いだロシア側の公的記録に残っていた」
 涼子は眉間をいくらか歪ませて削り掻くように手帳へ書き込みはじめた。
「たった二行だ。八七年にチクシという北極海に面した港湾都市で象牙公団に船ごと拿捕されて、その中に日本人、黒須欣一郎、七十五歳を確認する。そして逮捕、監禁の後にアンバルチクという有名な強制収容所に送られて、翌年、亡くなった、ということになっている」
 潘は仕切りガラスの向こうから様子を窺っている秘書に指のばつ印を見せた。
「ここからはクラウゼヴィッツたちの推測だが、おそらく黒須はKGBに嵌められたのだろう。老齢ではあるが、彼はマンモスの象牙市場を牛耳る立役者で、採掘権等に何ら摩擦を持っているわけでもなく悠々としていたから、KGBがロシア人の採掘業者と結託して追い落としたのではないか、ということだ。しかし今回、ニッケルとモリブデンを採掘精錬している業者と郡知事の名前を連ねて、フランクフルト経由で日本支社の山崎に伝えなければならない事実がある、と言ってきたんだ」
「祖父、黒須は収容所で亡くなったんじゃないのですか?」
 潘は頷きながら舞扇のように手帳を煩雑に開いてたどった。
「詳細は血縁者遺族に直接話したいという前提で…九〇年十月、北緯六四度・東経一三三度、レナ河の支流アルダン河中流域にて電池の放射能汚染により死亡する。埋葬された場所は黒須と親交があった地元ヤクート族の猟師が知る、とここまでだ」
「すると電池を電源にした灯台は、海岸沿いだけじゃなくて、大きい河沿いにも設置されているのですね」
「船が航行できる大河はシベリアならではだが、冬期に凍りついてしまえばハイウェイに様変わりして電池を電源にした無線標識が役に立つ」
 涼子は脚を組み直してもたれ掛かるように頬杖をついた。
「それで孫にあたるあたしが、墓参りがてらに祖父の最後を詳しく聞くことは縁者として納まりがよい話で、ニッケルとモリブデンでしたっけ、うちのメタルのラインの支援に繋がってくる、ということですか。本当にそれだけなのでしょうか?そもそも祖父の死亡原因が、放射能汚染で電池のストロンチウム90に因るものだということを当局は知らないわけですよね?」
 藩は頷きながら諳んじるような眼差しを天井へ向けた。
「知らぬふりのモスクワだろうな。クラウゼヴィッツの読みとしては、現政権が極右政党の資金調達に絡んだBAM、バイカル・アムール鉄道の保線計画に関与する出鼻を挫くために、鉱山業者と知事を使って放射能汚染の実態を、敏感な筋であるこちらへ流してきた」
「たしかに日本人は敏感な筋なのでしょうが、それなら日本のメディアとか、フランスやドイツのメディアに吹き込んだ方が効果がありますよね」
「広大なソ連、失礼、ロシア連邦の当局にあっては、こういった地方レベルの汚れ話の使い方は、間接的に利権が及ぶ範囲で充分なのだろう。大々的に各国のメディアに取り上げられて、あげくは現状使ってもいるこの電池を撤去することにでもなったら、他人事でも厄介なことなのだろうな」
 藩の眼は獲物を銜え捕った猛禽のように見開かれた。
「だから、政治と利権が後ろ楯になったマフィアが接触してこないとも限らない。断ってくれても構わない。明後日までに返事をくれないか」
 涼子は弾かれるように肘を立てて苦笑しながら頷いた。
「金属のチームからは今回の件の責任者、竹之内美恵、今話したBAMの大使館主催の懇談会で会わせたので憶えていると思う」
「ええ、とてもよく、クラトン4って知ってる、といきなり試されましたから…不勉強で存じあげません、と申しあげたら、あたしが今度行くところのすぐ近くで行われた地下核実験よ、と嬉しそうにおっしゃっていました」
「ロシア通にしてロシア人そこのけの強引さ、そして周囲の雑音に惑わされない利に聡い頭脳」
 潘は精力的な竹之内の言動の記憶を打っ遣るように深く座り直して続けた。
「しかし山崎涼子には、周囲の雑音を吸収して方向性を見い出す二枚腰の頭脳がある」

 山手線の内側には白く濁ったような雨が似合う、などと思いながら涼子は驟雨に煙る西麻布の街角を見ていた。実際に画廊喫茶の軒先からの滴りを見ていると、老婆の白粉を吸って茹だった汗、そしてそのまま立ち働く母を連想してしまうのだった。
 母は今日もまた自慢の塩瀬帯を締めて、さも粛々と少ない客に酒を注いでいるのだろうか。
 涼子の母は、名古屋の栄町の雑居ビル六階で小料理店を営んでいた。はぐれ烏の止り木のような「おばんざい・清子(きよこ)」は開店して十三年経っていた。大養鶏場の山崎家の煥発な長女だった母は、京都の女子大生の傍ら水商売を手伝いながら炊き合わせなどを身につけたらしい。しかし開店前にホットドッグを呑みこんでいるような母に、白々しく老け込んだ雨は似合わない。すると窓を曇らせた吐息の向うに、何故か湯気の立つ蕪蒸しが想像できた。涼子は気丈な母から蕪蒸しに至った連想を小さく笑った。
「お待たせね。ご無沙汰していました。その微笑みは仕事に充実しきっているマラソン・ドーチ(娘)そのものね」
 竹之内美恵は半刻前から観察していたような落ち着きで現れた。背後には落ち着かない様子で長身の男が立っている。顔立ちは細面で眩しそうな目つきの日本人そのものだが、痣だらけの逞しい腕をCSKA(陸軍中央スポーツクラブ)の星ロゴも賑やかなTシャツにとおしていた。
「電話で絵の興味はないって言っていたけれど、こちらもご同様らしくて…こちらは低温科学研究所のガイシ・ペトロヴィッチ・アラキ、荒木凱史(がいし)さん。六年前からシベリアへ亡命されて、三年前からはなんと消防士としてヤクーツクにいらっしゃるの。ロシア航空森林消防隊の特別研修生なんですって。日本では荒木さんでいいのよね?それともピーターとか?」
 竹之内は浮腫んだ手で荒木の肩甲骨をぴたぴたと叩き満面の笑顔をひろげた。
「荒木です、亡命は大袈裟ですが」
「昭和のくさいジョークよ。早速だけれど、あたしはこちらの荒木さんの案内で、新潟からウラジオストクへ入国して、ヤクーツクでフランクフルトの投信運用会社の社員と合流する予定です」
 涼子は上目遣いに頷いた荒木が頼り無げに見えて嘆息を漏らした。
「GMから聞いているかもしれないけれど、あたしは事前に一足早く入国して、投信会社のリポーターとポイントへ向かうかもしれないわ。そしてニッケル、リチウムの採掘の支障となっている地下核実験の忘れ物をリポートして、一刻でも早く既存のメタラ(Металла)の株式ファンド(投信)の信用を補正しなくちゃならないの。山崎さんはロシアは全く初めて?」
「はい、私は恥ずかしながら北緯五一度よりも北へ行ったことがないのです」
「五一度って言ったら本社かプラハあたり?」
「ウクライナのプリピャチです」
 竹之内は不意を突かれたように案外純朴そうな瞳を泳がせたが、荒木は心なしか姿勢を立て直して刺すように眼光を強めていった。
「プリピャチ、御存じかと思いますが、チェルノブイリの発電所に勤務した従業員たちが生活した町です」
「簡単には行けないでしょう?」
「行けますよ、簡単気ままなわけにはいきませんが。原子力関係者の研修ツアーがあるんです」
「保険付きなのかしら?」
「自己責任です。見学してからの健康に関しては自己責任による、という署名をしてからのツアーでしたが、トラックとか装甲車には近寄らないで路上なら安全だと言われていましたし、ガイガーカウンターを持っての短時間でしたから。あたりまえですが、それはまあ静かな町でした」
 竹之内は弛んだ二の腕を両手で摩りながら媚びる目尻を躍らせた。
「よかったわ〜山崎さんのような本当の原子力の専門家が一緒って凄く心強いわ。あたしなんか、未だにどこかの鉱山の中に入れって言われたら辞職しちゃうもんね。それに今回は町から離れた奥の奥でしょう、やっぱり荒木さんのようなツンドラ大好きで、危険大好きな男の人が先導してくれなくちゃ」
 荒木は涼子の睫毛が自分に向いて不意を突かれた。
「いえ、そんな、危険が大好きってわけじゃなくて…僕は馬鹿なんですよ」
「そういう謙遜の仕方って日本人らしいわ。そう思わない、山崎さん」
 涼子は頷きながら荒木の右肘の黒ずみに目を細めた。
「僕は岩手の生まれなのですが、岩手の男って昔から変な奴が多いんですよ。それにシベリアが、たまたま岩手に似た樹林帯ということで…普通の人はいくら生態に関心があっても、就労ヴィザまでは取得しないでしょう」
 竹之内は右肘の黒ずみを見て露骨に眉間に皺をよせた。
「だけどね、シベリアから日本やアメリカへ亡命した話なら、毎日のようにニュースになった頃があったわけよ。だからあたしの世代だとさ、こちらへ逃げて来る話なら云々と頷けるけれど、荒木さんは生態に関心があって、早い話がシベリアの虎とか鹿とか、それが好きで好きでたまらなくて、サハ共和国にずっと滞在しちゃってるんでしょう?その腕だけ見ても恐いもんね」
 荒木は火傷痕が斑に走る左手を掲げて言葉を探していたが、竹之内は運ばれてきた紅茶を配して腕時計を見ながら言い続けた。
「こうしてエキスパートが揃ったところだし、早めに概略と日時を打ち合わせて、途中にあったフレンチで食事しましょうよ。山崎さんがどこかご存知なら、そこでも構わないけれど」
「西麻布なんて二年ぶりです。普段は柏の蕪畑を眺めているんですから、先輩にすべてお任せします」
「柏は拍でいいところよ」と言いながら竹之内は腕を組んで天井を見上げた。
「それじゃ…あとメタラのお仕事として話しておくのは、メタラから離れるかもしれないけれど、BAMとかの鉄道路線の確保拡充による、えーと、流通の排気ガス規制、なんていうのがあるの。これによって環境関連のファンドを新しく設定したいという構想もあって、今回のメタラのファンドの裏付け調査に加えて、現地から提示された日本人の消息の件、つまり山崎さんの縁者の方のドキュメント、これは今後の関係強化のためによい材料になるのではないか。まあ、勝手も踏まえてそんな方向なんだけれど」
「分かりました。ただ、あたしはロシア語も話せないのに、祖父の墓参を目的のひとつとして同行するものですから、オクトの社員としては竹之内さんのお手伝いどころか足を引っぱらないか…」
「とんでもない、こちらが旅費だけじゃなくて防寒、じゃなくて夏だから防虫手当てを出さなくちゃならないところよ」と言って竹之内は振った手を茶碗にぶつけた。
「それにヤクート族のソ連邦時代の英雄、というご老人が会いたがっているんだわ、あなたに。なんでも伝説的なご老人で、場所柄もあって、猟師としても狙撃手としてもスーパーマンみたいに言われていてね。そのご老人が、あなたのお祖父さま、黒須さんのことで、是非とも伝えたいことがある、と仰っているらしいの」
「竜骨大王クロスか…」と荒木は唸るように言った。
「きっと地元の人達には馴染み深かかった素敵な方だったのよ」そう言いながら竹之内は荒木を軽く睨んで続けた。
「あとね、メタラの取り引きをやっていると、胡散臭い錬金術師みたいな伝説とか、鉱山での事故隠しなんかを、それこそ猟犬のように探している連中がいてうんざりするのよ。今回の一トンサイズの放射能を出す電池にしても…だいたいキュリー夫人だっけ?自分たちで放射能を見つけておきながら、大平洋で核実験をやっているような連中がよ、ドキュメンタリーを撮って、何かの賞でも取りたいのかもしれないけれど、早速嗅ぎつけていて煩いんだよね」
「フランス人は知っているんですね?」と言って涼子は唇をすぼめて眼を細めた。
「荒木さんに聞けば分かるけれど、森林火災の現場を取材していたフランスのTV局が、電池の放射能汚染を拾っちゃったのよ。取材用のベージュホートっていう車、北極とかそういう極地を調査するための雪上車みたいな車があるのよ。その車が電池の設営などで使われたものだから、モスクワの調査グループが車体から放射能を測定していて、そこをTV局が撮っちゃったみたい。撮影の種を探していた連中にとっては、まずまずの情報なんでしょうね」
「柏で準備のために収集しているうえでは」と言いかけて涼子は手帳を掴み上げた。
「昨日まで実際にオンエアされた情報は得ていませんが」
「それはそうでしょう、よそのお宅の粗探しなんだから。核にしても電池にしても、ロシアの技術をけなすのは構わないけれど、ロシア人を甘く見てもらっちゃ適わないわ」
「そうですよね、よその国に来て」竹之内の軽い憤慨が涼子の口許をほころばせた。
「それに、フランス本国からも圧力というか、原子力発電当局からなどの取材の制限ないし圧力、それもあったとみていいのでしょうか」
「そうね、TV局だって人並み以上に電気のお世話になっているんだし、フランスも資源としてのシベリアの天然ガスと石油は欲しいしね。しかもそのガスがよ、森林火災の原因のひとつと考えられているのよ。それで連中は、火災の現状と消防隊の華々しい活躍はしっかりカメラに収められたけれど…火災と関係がない電池の話、トナカイの角を三本にした放射能の汚染については、ちょっと待て、となったんでしょうね」
「トナカイの角が三本ですか?」
「あたしったら、こんな場所でいつもの調子で喋って、あたしこそ馬鹿ね」
 竹之内はそう言って隣の荒木の腕をもたれるように小突いた。
「日本でも詳しい筋では、もう知られていることだと思うんですけれど…」と荒木は飲み込むように言った。
「そうですね、荒木さんのところ、低温科学研究所の調査報告では、昆虫の突然変異が増えているとか」と言いかけて涼子は荒木の方へ凛と向いた。
「それで、汚染の実態は日本のメディアにはどの程度伝わっているのでしょうか。どこかTV局か新聞社で動いているところはありますか?」
 荒木がふわりと口を開きかけると、竹之内が遮るような眼光を送ってきた。
「日本のメディア以前に、ニュースソースとして、どこでどれだけ事件視させるか、そういった判断は、ロシアの科学アカデミーと共和国の郡部保安当局が連係して牛耳っているから心配ないわ。さらに今回の件は、保安当局と我々の上、金属事業部の本部との協議に形式上は一任されているわ」
「わかりました、お膳立てしてあるわけですね」と涼子はかわすように即応したが、彼女も潘の下で鍛えられてきた論舌の自負がある。
「それにしても私なりに情報を収集してみて首を傾げるのは、放射能被害がまったく日本に伝わってきていない現状で、日本人の黒須だけがクローズアップされていった繋がりが見えてこないことなのです」
 竹之内は噂どおりの怜悧を目の当たりにして満足そうに頷いた。
「そうよね、あたしの粗い話を荒木さんに補足してもらわなくちゃ。お祖父さま、黒須さんについて、こちらの荒木さんのご親戚が関係していらっしゃるようなの。どうぞ、お話して」
 荒木はあらためて目の前の女性が黒須の孫にあたる感慨に捉えられていた。
「えーと、わかりました、いやー何て言うのか、こうしてロシアのあの辺に関わる日本人が集まるとは考えたこともなかったものですから…僕の実家は盛岡なのですが、祖父の弟にあたる大叔父に、中に凱旋する凱旋の凱で、中凱(ちゅうがい)という人がいました。大叔父の中凱は、少年時代は体が弱かったそうで、兵隊に召集されないまま終戦を迎えたそうです。それでも青年になってからは、友人の影響からか、共産党員になってしまって、家を出てしまったそうです。しばらくは釜石を中心として、労働争議とかいうものに関わっていたようですが、六九年に、サハリンの蟹漁船に拾われるかたちで、亡命してしまいました。そうです、ソヴィエト連邦に本当に亡命してしまったのです。そこから先は、甥にあたる僕の父へ、父へ度々送ってきた郵便でしか様子を知ることはできなかったわけですが…父に見せてもらった手紙には、社会主義国家の称賛ばかりが書いてありましたね」
「検閲もあったでしょうからね」と言いながら涼子は首を傾げた。
「でも、亡命してから、やがて黒須と関わったということは…すみません、せっかちなものですから」
「いいえ、おそらく最初は喜んで迎えられたのでしょうが、そうはうまくはいかなかったのでしょうね」
 涼子は自分こそせっかちだという自負を呑み込むようにして真摯な眼光を放った。
「失礼ですけれど、大叔父さんはある立場から失脚、ないし放免された」
「そうです、七五年あたりから手紙は来なくなって、家族も消息は諦めるしかなかったようです。そして僕が高校生になった九六年、もちろんロシア連邦になっていましたが、エニセイ河沿いのノリリスクという町から、キャビアの缶詰と一緒に大叔父の手紙が送られてきました」
「ノリリスク、聞いただけで寒そうね。苦労されたんでしょうね」と言って竹之内は目を伏せた。
「ええ、やはり苦労されたようで、二重スパイの容疑で逮捕されてから、モスクワからウラジオストク、船に乗せられてマガダン経由でチェルスキー、東シベリアの方なのですが、そこへ送られて強制労働に耐えていたようです」
「アンバルチクの近くですね」と言いながら涼子は幾分すがるように手をあわせた。
「ごめんなさい、地図で見ただけです。黒須も一時そこに拘留されていたところだというので」
 荒木は剃り残した顎髭を立てるようにして反り返った。
「アンバルチクをご存知でしたか、ラーゲリ(強制収容所)でロシア人には有名なところですが…一度行ったことがあるのですけれど、夏でも流氷が漂っていて、まったく凄まじい所です。僕は子供の頃から、顔立ちやこんなふうにぼーっとしているところが、大叔父の中凱に似ていると言われてきました。その大叔父も、僕が休学してロシアへ渡った翌年に亡くなりましたが…やっぱり良くも悪くも、僕の伝説っていうか、神話っていうか…」
 竹之内は涼子の手帳を押さえるように浮腫んだ手をおいて微笑んだ。
「ラーゲリ、あたし達の時代のロシア語ね、ソヴィエトの陰部の象徴であり…」
「崩壊の象徴となったわけですね」と涼子は呟くように言った。
「まあ、ラーゲリの話はとてもお腹が空いてくるから、食事をしながらにしましょうよ」

 涼子は荒木凱史と地下鉄で同方向になった。荒木は上野駅近くのホテルに宿泊を取っていた。西麻布で食事を済ませて、横浜住まいの竹之内と別れてみると、ワインの酔いも手伝ってか、二人は話し足りなさを実感して日比谷で降りることにした。涼子の足は潘に二度ほど連れられた山手線ガード下のビヤホールへ向いた。
 バイエルン地方の風俗を模した店内には、珍しくリヒャルト・シュトラウスの交響曲が流れていた。ビールとお決まりの酢漬キャベツは、出会いを祝うように賑やかに運ばれてきたが、二人は仕事上の探り合いも佳境といった観で、静かにビアマグを小突きあった。そして女と男のお洒落なそれとは言えそうもない会話に陥っていった。
「…するとドイツは放射能放出や事故を懸念して、使用済み燃料の再処理をやめたのではないのですか?」
 涼子は接近してきた凱史の口許からノースリーブの肩を反らすように距離を置いた。
「経済的に割りに合わなくなったからです。現状の原子力需要では、再処理よりも直接処分した方が安いとふんだわけです」
「そのやめた再処理契約をオクトは買い取って、イギリスの再処理燃料を、日本の電力会社に供給しているわけですね。採算が合いますか?」
「そうね、長い目で見るしかありません、その時々の原油価格の動向とか、投資家が望むような金融商品への組み込み方に左右されますから」
 凱史は上腕筋をそびやかして拳をにぎりこんでみせた。
「どちらにしても、世界はプルトニウム余りにやっと気づいてきて、増殖や再処理から手をひいてきているわけですね、日本を除いて」
 涼子は頷きながら白ソーセージをてきぱきと切り開いて微笑んだ。
「原子力が好きでプルトニウムを集めているわけじゃありません、日本も、私も。もっとも、あたしみたいな人間をプルトニウムを求めて漂流するプルトニウム・ローバー、プロのプロ、とか冗談で言っている人もいますけれど」
「いや、何て言うのか、あなたの仕事を否定しているわけじゃなく」と言ってから凱史はマグカップを飲み干して続けた。
「自分のことになりますが、僕は消防隊が夏よりも格段に時間が持てる真冬には、低温科学研究所の現地法人として実験観測や研究者のお世話に追われるのですが、そうそう、最近はTV局クルーをお世話することもあります。その際に携帯するようになった機材のひとつとして、ガイガーカウンター、放射能検知器があります」
 放射能を気にしている都市生活者を探すのは困難だとしても、放射能に関わっている僻村隠遁者を探すのは容易いこの世界である。
 涼子は唇から咽喉もとを凱史に見つめられて噛むことをやめた。
「何かあったのね」
「ええ、二〇〇四年に友人を癌で亡くしました。さっき話に出たノリリスク、そのノリリスクよりもエニセイ河上流にあたるイガルカという町で、永久凍土研究所の父親を手伝っていた二十四歳のアーニャという女性です」
「詳しく伺ってよろしいかしら、その方はロシア人?」
「父親のフョードロフはユダヤ系のロシア人ですが、母親はヤクート人なのでアーニャは混血で、そうそう、色の白い日本人のようだったなぁ」
「不躾ですけれど、恋人だったの?」
「いやー、何て言うのか、亡くなってから自分が意識していたことを覚った次第で、鈍いものだから。そもそも八八年に彼女の母親、フョードロフの妻がやはり癌で亡くなっているんです。それを知りながら…僕は思いやりが足りなかった」
「その原因がストロンチウム電池だったの?」
「いいえ、フョードロフが断言しているところでは、アーニャがまだ胎内にあった八〇年頃、ダイヤモンド鉱山で繰り返された核爆発の結果、プルトニウムで汚染された地下水が河へ浸透して、母親がそれを生活水として使ってしまったとか」
 涼子は口許のマグカップで煌めく泡に熱い息をかぶせた。
「消防隊の認識票にある僕の父姓ペトロヴィッチですが、航空森林消防隊という特殊な部門の研修生だから、フョードロフが後見人になってくれて、登録のときに自分の父姓を分けてくれたのです」
「言わば、あなたにとってのシベリアの…義兄弟、でいいのかしら。それとも、亡くなったアーニャへの想いからすれば…」
「フョードロフは年齢からすれば父親ですが、今でも研究者としては若々しくて、僕にとっては憧れの兄貴っていう感じです。僕がシベリアへの思い入れを語る中に、アーニャの存在があったことを正直に言うと、彼はヴォッカのトゥラバ(グラス)を当てて言いました…」
 凱史は俯き加減にビールを飲み下した。
「アーニャはズェムリェ(大地)になった。だからアーニャこそがシベリアなのだ。ユーガヴァストーク(東南)から君が来るのを待っていたよ、と。すみません、夏の東京の新橋で、シベリアの自分のことばかり喋っていて。どうしたんだろうな?酒は、日本人にしては強い方だと思っているのですが…」
「いいえ、これからシベリアへ行くにあたって、先導していただくあなたが率直な方だと知れてよかったわ」と涼子は潔癖な心象をさらりと言って続けた。
「先ほど西麻布のフレンチでお聞きしたけれど、大学の生物学教室を出てから、望みどおりウラジオストクへ渡ることができたのよね。それから二〇〇四年まで、放射能汚染を伝える情報がなかったわけではないでしょう?」
「もちろん、放射能汚染はアーニャだけじゃない」と言って凱史はテント地のウェストポーチからラミネート写真を取り出した。
「見てください。僕はアルセーニェフ、デルスー・ウザーラのアルセーニェフ、デルスー・ウザーラはご存知ですよね?」
「黒澤の映画よね」
「そうです。そのデルスー・ウザーラのアルセーニェフに憧れて休学し、そしてフョードロフ・ペトロヴィッチの導きの許、ウラジオストクの東にある、えーと、ラゾ自然保護区、そこで生態研究を始めました。そして最初に確認したチーグル、虎のことだが、これがタイガの神、シベリアン・チーグルのヨシフです。こんなに美しい虎を、僕はこの眼で、肉眼で見たんですよ」
 凱史は五本指を立てて五亜種の虎の生息地、そしてシベリアのヨシフがいかに大きかったかを力説した。さらに涼子の持つ写真に、指を翳して森林中の縞の迷彩効果を語りながら突然、放心したように空のカップを咥えてウェイターを呼んだ。
「二〇〇二年のときは間近で凄かった。野生の虎を一年間に二度も見れたことは、まったく奇跡だろうな。そして二〇〇三年の二月、三度目にヨシフを見たときは死んでいました。保護区から出て、ナホトカ近くの村に現れたところで、麻酔銃を撃たれました。ヨシフは麻酔銃のショックで死んだと…僕は何も知らずに日本からのこのこやって来たので、麻酔銃のショックでヨシフが死んだということを丸呑みに信じていた」
 凱史は涼子から写真を受け取って大きく頷いた。
「一週間もしないうちに森林官レオーノ…失礼、彼は現役なのでエルとしか言えないが、エルから酒を誘われて真相を聞かせてもらった。解剖を担当した獣医がエルの友人で、その獣医から放射能の影響を分析してほしいと言われたので、エルが情報を収集してみると、沿岸近くに転倒して放置されたままの原子力電池とその基盤台の間に、ヨシフはしばらく住み着いていて…猫のように暖をとっていたんだろうな」
 涼子は咳き込んだかのように一瞬の嘔吐を押さえこんだ。そしてシンフォニーがやんでいるのに気づいて辺りを窺うように言った。
「鉄条網で囲って塞いであったんでしょう?ヨシフ、虎じゃなくても、他の家畜などにとっても危険なことは分かっていたんでしょう?」
「ところが、エルが収集した情報を基にした獣医の解剖報告書は、騒がれない方向で修正された。実際に写しを読ましてもらったんだが、細かく隅々まで読めば、前脚の骨から一般に毒性が低いストロンチウムは確認された、とかはあったけれどね」
「それはそうでしょう。釈迦に説法かもしれないけれど、ストロンチウムはカルシウムと置換しやすくて蓄積しやすいから」
「僕もストロンチウムが身近かに転がっている物だとエルから聞いて驚いた」
「問題はね、磁石とか花火とかで使われているストロンチウムじゃなくて、核の種、核種として危険な90なの、β線を出すストロンチウム90のことなのよ」
 凱史はつきあうように辺りを窺う目配せで微笑んだ。
「さすがはプロだ。エルが僕だけに言ってくれたことは、ヨシフの体内に実際にあったのは、そのβ線を出す危険なものだったってことだ。だからヨシフは毛皮どころか爪ひとつ残さず処分された」
 しばしの沈黙も許さぬようにシューベルトのテーノル曲が歌われはじめた。涼子は苛立ったような眼をスピーカーへ向けた。
「アーニャは生まれつき右手が使えなかった」凱史はそう言って二つのマグカップを受け取った。そして片方の持ち手を替えて涼子へ差し出した。
「こんな話ばかりしていると、竹之内さんからチームを外れるようお達しがくるかもしれないから、こうして山崎さんと飲むのも、最初で最後になるかもしれないな」

 シンポジウムの懇親会という場で、一時間を費やすほど山崎涼子は閑な体ではなかった。上物のシャンパンといっても、ダイオキシン汚染の専門家と長々と楽しむ気は毛頭ない。胸毛の中に十字架を埋れさせているブラジル人からやっと逃れて、上階の店舗を確認してエレベーターへ乗り込んだときは六時を過ぎていた。エレベーターの出窓から見る浜松の夕景は小雨に濡れていた。上海やムンバイの地下水汚染に関する形式的な報告を耳で聞きながら、手許で過去のウラン盗難に関するロシア原子力省のモホフ報告を熟読していた目には、浜名湖へ誘うような紫光の連なりは哀愁濃く見える。嘆息も仕方ない。向かっている最上階のラウンジには母が待っているはずだった。
「さすがにあたしの娘、いい女だわ。いつもの七部袖の白いシャツに、何か中近東風のスカーフね」
 母清子は紺染めの麦藁ハットを被ったまま、娘涼子の接近を舐めるように見て喜んでいた。しかしジーンズにサンダル履きの微笑は油断ならない。涼子は母の右隣へ椅子を引き寄せてから、トルコブルーに銀砂のスカーフを整えながら首を傾げてみせた。
「これはマラケシュよ。そっちこそ、今日はお着物じゃございませんの」
「着物は仕事着だからね」
「まるで海からの帰りみたい。でもね、そんな常滑帰りのような格好だから、大した話じゃなさそうだと思わせておいて…もう何も驚かないからね」
「常滑って、よほどあそこが楽しかったんだね。あの潮干狩りね」
「あそこは、あたしにとってニュートンの浜辺よ、今でも」
「でもさ、あんたは世界中あちらこちらに行っていて、今度はシベリアの奥へ行くんだからさ、母さんをカネオヘくらいは連れて行ってくれてもいいんじゃない?」
「カネオヘ?」
「ハワイのカネオヘよ。オアフ島の裏側の観光客が少ないところで、落ちたてのマカデミアンナッツが食べられるんだって」
「ハワイね、人並みにハワイなんて行けるかどうか…あたしはいつだってIAEA(国際原子力機関)の監視下にあるし、母さんは大学病院の監視下にあるんだからね」
「そっちは大丈夫。それに何かまた見つかったら見つかったで、余計に行きたくなるだろうね、カ・ネ・オ・ヘ。ともかく、余命幾ばくもないとなったらさ、親孝行の極めつけとして、思い出しておくれよ」
 涼子は自分に似た口調に畏れ入りながら安堵していった。母清子の最たる懸念は子宮筋腫手術後の定期健診にあったのだが、せっかちで素直な性格は体調不良を隠すようなことはなかった。しかし店を休んでまでして、浜松に来ている娘を訪ねて来ている。逡巡する自分を見られることが嫌な涼子は、メニューを一瞥してから軽く指を鳴らした。
「食事は?話っていうのは、白焼きで一杯やりながらの方がいいのであれば、場所を替えなくちゃね」
 清子は俯くようにして暗んできた窓辺に顔を向けた。
「それとも、鰻が重たい感じだったら、チヌのお造りでも?」
「今のチヌだったら、グリルでバルサミコ、それも話し終わってからにしようよ」
「分かった、そういう静々と拝聴する話なのね」と言いながら涼子はウェイターを呼び寄せた。
「マカデミアンナッツがなければピーナッツ、ブルーハワイがなければジン・トニックでもやりましょうよ」
 話すべきか迷っている母がいた。
「来週の今頃はサハ?サハ共和国にいるのよね」
「やっぱりね、シベリアへ行くのは反対だ、って言っていたもんね」
「サハは、ちょっと前まではヤクート自治共和国っていっていたわね。お父さんが何度も話してくれたから憶えているわ」
 涼子は母の乾いた左手に右手を添えるようにおいた。
「大丈夫、話して。シベリアのこと、お父さん、そして黒須欣一郎、いつか話してくれるだろう、と思っていたわ」
「そうね、あんなお店をやっている経験上、こういうことは憶測を交えずに、まず見聞きしてきただけのことは、きちんと伝えるべきなんだろうね…」
「カネオヘのブルーハワイでいいのね?あたしは、行かせたくないという国のモスコミュールにでもしようかな」
 母娘の神妙さに合わせるように、闇が質量をもって黒々と遠州地平に降りてきていた。磐田の方に走る裂光は落雷だろうか。ともあれ親子であれ組織であれ、若輩が畏まれば話の堰は切られる。清子は麦藁ハットをとって髪に軽く指を置いた。そして予め整理しておいたように丁寧に話しはじめた。
「そう、お母さんは、あんたをシベリアへなんか行かせたくない。あんたが仕事上とはいえ、黒須欣一郎と関わりを持つ、と聞いた瞬間から、なんかこう憂鬱になったわ。母親とすれば、お父さんを惑わせた人、旧姓黒須次郎を惑わせた関係、それがお鍋のように沸々と煮えたぎっている大陸に、娘のあんたを行かせたくない。当然でしょう?常滑の見晴らしのいい浜辺で遊んでいた娘を、有無を言わせず拉致して、湿って凍てついた樹海の奥へ放り捨てる。まともな世界じゃないわ。お父さんがよく言っていた、大陸の北には、ある種の男にとって、仕事の一線を越えさせて、感情移入させる魔のような魅力があるのかもしれないと。その魔に憑かれたようになってしまって、今まで大事にしてきた平々凡々な日常に戻れなくなる危険があるのよ。…そんなふうに魔に憑かれた人達、中でもお父さんとお母さんの出会いを取り持つように現れた人、その人のことを話さないで、あなたをシベリアへ行かせるわけにはいかないわ」
 清子はマカデミアンナッツがあったことを喜んでみせてから続けた。
「お母さんが、京都の白川の叔父さんのところに下宿して、かたちばかりの女子大生生活をはじめた頃は、安保反対の学園紛争が真っ盛りで、おちおち授業を聴いているような雰囲気じゃなかった。しかも遊ぶ金には困らないお嬢さまだったから、あちらこちら跳びまわっていたけれど、裏千家のお茶と大学の聖歌隊だけでは、若かったから夜な夜な鬱憤が堪ってやりきれなかったのね。そこへお茶で知り合った人から、黒谷の割烹料亭のお手伝いを紹介してもらって、そう、あなたも一緒に二度は行っているよね。あそこで働きはじめて、聖歌隊をやめたりしたものだから、名古屋の親にばれてしまったときは、叔父さんに飛び火して申し訳なかったけれど…とても楽しかった、いろいろな人に会えたし、炊き合わせや焼き物、ちょっとした八寸の作り方なんかを教えてもらって。お父さん次郎さんと出会えたのも、あそこで働いていたからこそ…記憶を辿って細かに話すとね、昭和四十五年の十月ね、三島事件のあった頃だからよく憶えているわ。京大の経済学部の教授でマル経の論客なんて言われていた先生が、いつもは出版社との打ち合わせの昼食にしか使われないのに、珍しく夜に予約を入れられて、女性の方を同伴されたの。マチコ・シャービン、旧姓脇坂真知子。ボーイッシュな感じで若々しく見えたけれど、思うに今のあたしと同じくらいの六十代だったんだろうね。先生の先輩で久しぶりに日本へ戻られたとかで、床の間を背にして注がれるままに冷たそうな眼でじっと飲んでいたわ。翌週から、彼女はアメリカの新聞記者とか雑誌記者と一緒に来るようになったんだけれど、新聞記者が日本贔屓で名古屋にいたこともあったせいか、学生のあたしをヘボ仲居として指名して必ず呼んでくれたの」
「そのご婦人マチコさんはロシアから、ソビエト連邦から日本へ戻られたのよね?」
「お察しの通り、たしかモスクワではマルクス・レーニン研究所に勤めていて、あたしには滅多に話しかけてくれなかったけれど、時折、日本人向けの広報担当みたいなことばかりやっているのよ、とか言って苦笑いしていた…そうそう、どう転んでもスパイだと疑われているにきまっているなら、とか言って、京都府警の上の方とご一緒のときもあったわ。あたしなんかも、ちょっとスリルがあって楽しんでいたようなところがあったわね。なにしろ右の組関係の方からは、売国奴にのうのうと酒を飲まして湯豆腐食わせおって、とか電話がかかってくるし、マチコさんに憧れている左の学生たちは光明寺の前に集まったりで、物騒でお巡りさんとは顔馴染みになっちゃうし…ほんと、今から思えば、若かったからどこか楽しんでいたのよね」
「お父さんはまだご登場されないのかしら」
「お父さんと出会ったのは、卒業した年の五月下旬だったね。京大の先生から女将伝いで、敦賀で教師をやっていた教え子を、四月から助手として呼んだんだけれど、俳優みたいにいい男なんだけれど女っ気がまったくない。暇さえあれば腕立伏せをやっているような筋肉男で色気がない。そこで知り合いの料亭に可愛い娘さんがいる、ともう話してあるから一度会ってくれ、となったわけよ。笑っているけれど、あなたがこの世に生まれ出るかどうかの瀬戸際でしょうよ」
「笑っていないわよ、どうも親のロマンスは想像するのが難儀だわ。ところで脇坂真知子だっけ?そのマチコさんは、さて、お父さんとどういう関係なんでしょう」
「お父さんとつきあいはじめて半年ばかり経った頃、マチコさんの訃報に接したの…昭和五十一年かな、ベトナム戦争は終わっていたね、お母さんは叔父さんの精密機械の工場で事務員として働きながら京都にへばりついていたけれど…二人で嵐山の紅葉を見に行って、常寂光寺の苔の上に散らばった紅葉が凄い赤だったから覚えているわ。お父さんがね、次郎さんが、マチコ・シャービンがモスクワの病院で亡くなったようだ、って言ったの。それまで二人の会話にその名前は出てきていなかったので、お母さんは正直びっくりしちゃったわ。後になって考えてみると、おそらく次郎さんは、教授からそことなく聞いていて、仲居の真似事をしていたあたしとマチコさんが、素性を知り合っている仲だと思っていたみたいね。だから昭和四十五年にマチコさんが日本へ戻ったときに、突然に敦賀の次郎さんのところへ訪ねて行ったこととか、昭和三十二年頃から教授宛の外国郵便を経由して、マチコさんから黒須のお母様へ手紙が届いていたことまで話してくれたの」
「せっかちなのでご免」と言いながら涼子はウェイターを呼んだ。
「ウオッカをダブルにしてください。マチコさん、彼女も敦賀の出身だったの?」
「あたしはスペイサイドもののスコッチをロックでいただきたいわ」そう言って清子はグラスを渡しながら窓辺の闇に何かを見ようとしていた。
「あたしが聞き集めたところでは、マチコさんは琵琶湖の西、今でいうマキノ町の教員夫婦の長女に生まれて、師範学校を卒業してから篠山で教員生活を送っていたようね。そして教員生活の傍ら左翼思想に感化されていったみたいね。そうなると戦前だから特高、特別高等警察に睨まれて篠山を追われることになって、大阪の都島あたりに潜伏するようになっていたみたい。そのときに殺傷事件に連座した容疑で指名手配されて、たしか博多まで逃げて、大阪の朝鮮人の手引きで大陸へ渡っていった…そんなところかな」
「戦前だから亡命第一世代ってとこね」と言って涼子は反り返ってマカデミアンナッツを頬張った。
「メール読んでくれた?今の話からすると凱史の大叔父、中凱さんは戦後で第二世代にあたるわけだけれど…結局はソビエトもなくなっちゃって、夢が夢の痕を残したまま、シベリアのかなり涼しそうな風土だけは変わっていないみたいね」
「凱史って、メールにあった森林消防隊、山火事を消している奇特な日本人?彼の大叔父さんが次郎さんのお父さん欣一郎と最後に接触した日本人なのね?」
「知りえている限りでは」と言いかけて涼子は諳んじるように遠くの夜景に目を細めた。
「公の文書では、黒須欣一郎は八七年にチクシで捕まって、翌八八年にアンバルチクの収容所で亡くなった、ということになっていたらしいけれど、メタルの亡者ども、うちの金属事業部が拾い集めてきた今回の情報では、九〇年十月にアルダン河水系にて腫瘍疾患にて死去。これらの情報源が、八二年夏くらいから黒須ファミリーの一員として、裏市場で働きはじめていた荒木中凱その人なの。中凱さんの黒須からの聞き伝えでは、黒須欣一郎はアンバルチクからは買収に次ぐ買収でなんとか脱出して、山脈を挟んで商売を再開した頃に…おそらく放射能汚染に遭遇したらしいの」
「やっぱり行くのをやめなさい」と母清子は眉間を摘むような仕種で俯いた。
「言うつもりはなかったんだけれど、お祖父さんが黒須欣一郎だから何だって言うのよ。あんたが原子力の材料を扱っているから何だって言うのよ。あんたにもしも何かあったら、あの世でお父さんに顔向けできないどころか、あたしとお父さん、次郎さんとの結婚も生活も、丸ごと最初から黒須欣一郎に呪われていたようで…」
「そんな母さんらしくないこと言って」と言いかけながら涼子は携帯電話を取り出してメモをとりはじめた。
「ワキサカは普通の脇坂でマチコは?真実を知る子で真知子ね。あちらへ行ってからはマチコ・シャービンね。さて、聞かせて、本題を。大陸に渡ったマチコはいつ、どこで黒須欣一郎と出会って、そしてお父さんとどう関わっていくのか」
「懲りない子だね、誰に似たのか」と言いながら清子はスコッチを含んで憂鬱な目を流した。
「あてにしているようなドラマチックなことは、何もありゃせんて」
「乗りかけた舟だよ、お母ちゃん」と言って涼子は子供っぽくグラスの氷を吸い含んだ。
「いまさら廻りまわってお父さんが実はロシア人でも驚かないからさ」
「お父さんは、あなたが貰ったそのくりくり眼(まなこ)そのものの縄文人よ、残念ながら」
 そう言って清子はやっと母らしい興奮が胸奥で静まったのを感じた。
「例えば、お父さん、次郎さんがマチコさんの子供だった、なんていう韓国ドラマみたいな話ではないにしても…そもそも次郎さんのお母さま、黒須欣一郎の妻、奈津子さんは、昭和二十八年に二歳の次郎さんを抱えて、中国から引揚船で舞鶴へ戻られたのよ。あの有名な興安丸、と言っても知らないか。ともかく、親子はお母様の実家がある敦賀と京都を行ったり来たりしながら戦後を生き抜いてきて、お母様は苦労が祟って、昭和三十九年に亡くなった。それからの次郎さん、天涯孤独っていうか一人になっちゃったお父さんは、資産家だったのか、あるいは大陸の父親、欣一郎から華僑のルートを伝って送金されていたのか、世間が思っているほどは困った生活もせずに、京都でそこそこの学生生活を送ることができていたみたいね。そして卒業後は教授から声がかかるまで、敦賀でのんびり教師をしていたわけよ」
「それで、お母さんと出会う前の敦賀のお父さんのところを、マチコは昭和四十五年に訪ねてきたのよね。どんな名目、っていうか、どんな関係で?」
「お父さん、次郎さんはマチコさんがいつか訪ねてくる予感を持っていたみたい」と言って清子は胸元を覗き込むように粛々と俯いた。
「黒須欣一郎という人は、最初から象牙を商う商人なんかじゃなかったのよ。あんたがさっき言っていた亡命第一世代の先鋒の一人で、おそらくマルクス・レーニン研究所の足許で活動していた最初の亡命者の一人じゃないかと思う。思うっていうのは、京大の先生がおっしゃるには、戦前の満州やカラフトでの日本の勢いに苛立っていたロシアのお偉いさんからすれば、日本人の革命同士っていうのはあまり…」
「表立って活動させられる存在じゃない、ってことね」
「そう、マチコさんのときにはもう戦後で、日本人で、しかも女性だから宣伝効果もあったでしょうしね」
 そう言って清子は苦々しそうにグラスを呷った。
「だから裏方にせよ、先に活動していた黒須欣一郎とマチコさんは、日本にいたときに知り合っていたかは不明だけれど、モスクワでごく自然に出会ったと言えるわね。そして女手一つで次郎さんを育てていた奈津子さん、つまりお母さまの許へ、御主人欣一郎さんと活動を共にしている西近江出身の脇坂と申します、という最初の手紙を送ってきた。それからお母さまが亡くなられた後の四十二年頃まで、次郎さん宛も含めて年に一通くらいの割合で送ってきているわ。手紙の内容は、最初のもの以外は欣一郎の動向にまったくふれていないし、教授がおっしゃるには、活動家としての黒須欣一郎は、ソビエト側のどこを探しても見あたらない。だから手紙が送られてきはじめたこの頃には、黒須はシベリアで象牙を商いながらも、活動家としてはモスクワと縁遠おくなっていたのか、もしくは追放されていたのか、逃亡の憂き目になっていたのではないか、ってことなのね。だからマチコさんが日本の妻宛てに送っていた手紙は…そうね、欣一郎恋しい、自分も寂しい、正妻も気になる、そこで他愛もない女同士の腹の探り合い慰め合い、ってとこかな。あなたも三十路女ならなんとなく気持ちが分かるでしょう。それにしても、欣一郎はお父さんと違って大もてだったようね。写真見たことあるでしょう?女ってさ、亡命してマルクスを研究している堅物女でも、細面の不良ぶった男には弱いもんなのかね…」
「女心はとてもとてもまだ分かりませんけれど、お父さんも手紙の中身まで、事細かくお母さんに教えているのね、さすがの恐妻家」
「何を言っているの、この子は」と清子は斜に座りなおしてウェイターを呼んだ。
「これってタムデュー?同じものをちょうだい。手紙の中を事細かく知っているのは、あたしが今でも持っているからよ、封筒ごと全部。お母さまは亡くなるときに処分するように仰っていたみたいだけれど、次郎さんは独りぼっちになっちゃってそんな気分じゃなかったんでしょ。それに次郎さんはやたら海外出張が多くなってくるし、父親似なのか、あなたは昔から手がかからない変な子供だったから、このままだとキッチン・ドリンカーになっちゃうと思ったところに、ソ連が崩壊してから、サハ共和国のお役所からお父さん宛てに二度ばかり手紙がきたのよ。お父さんに内容を聞いてみると、マチコさんの功績を讃えているとか、彼女の墓参りに来ないかとかいうことで、モスクワからきた手紙なら分かるけれどサハでしょ、いくらあたしだって変に思うでしょうよ。そうきたら蛇が出ようが何が出ようが、知りたいことは知りたい、となっちゃうわね」
「仰るとおりです。探るなと言われても、やめろと言われてもやめられないこの性格は、お母さん似なのかな」と言いながら涼子は勢い空の氷を歯にあてた。
「やっぱり、お母ちゃんはどえりゃい(ど偉い)女房じゃな」
「どえりゃあもなにも、お父さんのアイデンテテはお母さんのアイデンテテだからね」
「なるほど、アイデンテテを持ち出されては痛テテだな。しかし、ありがとう、こうなると探りの血統は証明済みということで、あたしも知りたいことは知りたい、蛇が出ようが羆が出ようが」
 清子は嘆息のまま麦藁ハットを摘んで、それに語りかける風にロシア語をぽつぽつと置いた。
「Причина, по которой человек несчастен, состоит в том, что он не знает, что он счастлив(人間が不幸なのは自分が幸福であることを知らないからだ)」
「ドストエフスキィ?」
「そう、あたしの時代のドストエフスキー、あたしの時代のロシア語さ」

                                       了 






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omachi

WEB小説「北円堂の秘密」を知ってますか。
グーグルやスマホでヒットし、小一時間で読めます。
その1からラストまで無料です。
少し難解ですが歴史ミステリーとして面白いです。
北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。
読めば歴史探偵の気分を味わえます。
気が向いたらご一読下さいませ。
by omachi (2017-12-21 13:53) 

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